沖縄の寒緋桜(カンヒザクラ)で花見を満喫
日本国内でどこよりも早く桜が咲く沖縄。しっかりと色づく濃いピンク色が印象的です。また、うつむきがちに咲く花は、本州で咲く桜とは違った趣があります。沖縄ならではの桜の楽しみ方を達人に紹介してもらいましょう。
冬まっただ中の1月、2月にかけて、沖縄では桜のシーズンを迎えます。沖縄で楽しめる桜は、カンヒザクラ(寒緋桜)という種類で、花びらは濃いピンク色に染まり、本州に咲く桜を見慣れている人には、そのかわいらしい佇まいに少し驚くかもしれません。カンヒザクラ(寒緋桜)は本島北部から徐々に開花が進み、それに合わせて各地では桜まつりが開催され、桜を楽しもうと多くの人たちがまつり会場を訪れます。そんな沖縄の桜について、名護さくら祭りの運営を手がける達人に、魅力や楽しみ方を教えてもらいました。
更新日/2018年 1月
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沖縄の桜は濃いピンク色のカンヒザクラ
沖縄の桜は有名なソメイヨシノとは違い「カンヒザクラ(寒緋桜)」という品種。誰もがイメージするような淡い白色でわーっと花が咲くのではなく、濃いピンクのつり鐘状の花がかわいらしく咲きます。「下向きに花を咲かせるので、のぞき込むように見上げると、写真もきれいに撮れますよ」と仲村さん。名護のカンヒザクラはもともと自生していたものではなく、1902年に県立農学校が名護に建設されたことから、この学校を通じて公共施設や民家へ苗木が配られ、普及していったからだと考えられています。名所となっている名護城(なんぐすく)は、大正の始めころに地元の青年団が50本あまりの桜を植えたのがはじまりです。沖縄には本土のような“お花見”の習慣はなかったが、開花がちょうど旧正月のころだったことから、花器に桜を差してお祝いをする程度だったそうです。やがて桜が名護城や、その周辺に増え、1955年頃に数百人の人々が名護城に御座を敷き、酒を酌み交わすようになったことから、1962年、第一回名護桜まつりが開催されました。今では名護城公園、名護市と隣りの本部町にまたがる八重岳、今帰仁村(なきじんそん)にある今帰仁城跡は日本さくらの会による桜の名所100選にも選定されており、地元の人にも愛され、名護、やんばるの季節の風物詩のひとつとなっています。
日本で一番早い桜を楽しむお祭り
沖縄流の桜の楽しみ方が“お祭り”です。毎年1月の中旬から2月までのカンヒザクラが開花するころに合わせ行われる各地の桜祭りです。「県民の場合、御座を敷いてお酒を飲んで楽しむというよりも、桜を眺めながらお散歩したり、出店で料理を買ったり、イベントを見たり、お祭りの雰囲気を楽しむ人の方が多いようですよ」と仲村さん。たとえば名護の桜祭りは2日間にわたって開催され、カンヒザクラが咲き誇る中でのパレード、特設ステージでは太鼓の演舞や懐メロ歌謡ショー、ストリートダンス、ライブなどが賑やかに催されたり、写真展や光文字、桜見ウォークなどの行事も多彩で、名護の街全体がお祭りムードに盛り上がります。2013年は県内外から17万人もの人が訪れました。このカンヒザクラの開花は、本島北部から那覇へと南下していき、2月いっぱいころまで楽しむことができ、日本の春の訪れを感じることができます。
“さくらの街”として魅力を増している名護市
カンヒザクラは名護城だけでなく、名護十字路付近の通称“名護 裏桜街道”、市内を流れる屋部川(やぶがわ)沿いでも見ることができます。街中でも桜を楽しめるのには理由があり、名護市では桜の普及活動に積極的に取り組んでいます。「8月頃には台風で倒れてしまった桜を撤去して、新たに苗木を植えたり、剪定をしたり、市民にも協力してもらいながら桜を大切にする活動を続けています。また、結婚や出産の記念に桜を植樹してもらったり。そうすれば桜を大切にしてくれると思いますし、市民にもより親しみのあるものになりますからね。台風による被害が少なくないのですが、さくら祭りが100回まで続けられるように、市民の皆さんと一緒に植樹活動を行っていきます」と仲村さんは笑顔で話してくれました。
毎年1月下旬頃から、どこよりも早く春の訪れを感じさせてくれるカンヒザクラ。そのかわいらしい佇まいの桜を、ぜひ堪能して欲しいですね。